さやなかなるときをここで...

シラノ・ド・ベルジュラック

作:エドモン・ロスタン
翻訳:渡辺 守章
演出:成井 豊

古典です。凝縮された2時間。
この話なら、これくらいが良いんだろうね。

話どおりうけとるなら、シラノの果てしない純愛。
醜悪な見てくれを言い訳に、恋する相手に気持ちをつたえることさえ放棄してしまう男、詩人シラノ。
愛するロクサーヌが恋に落ちた相手、クリスチャンの手紙の代筆をすることでしか気持ちをぶつけられない。
ストレートに言葉を巧みにあつかい自分の気持ちを伝える人達。
そこには、他の誰に対する気遣いもない。あるとすれば、自分への気遣いのみ。

シラノと物語をともに歩むなら、第四幕〜第五幕が心をゆさぶるのであろう。
相互利用から始まる友情は永遠になり、友情故にシラノは沈黙を守る。
それをシラノの弱さとみるか強さと見るのか・・・

クリスチャンの悲劇は、最初から予定されていたコト。
自分の言葉を持たず、ただ与えられた言葉を伝書鳩のごとくつたえるだけ。
もしかしたら、現代の自分たちの姿なのかもしれない。そう、報道されることを鵜呑みして、言わされている言葉を自分の意見だと錯覚している我々は、クリスチャンより悲惨だろう。
三幕で、シラノの愛の詩をただただ見守り、自分の道化さ加減に嫌気がさしてもなお、ロクサーヌへとの接吻を選ぶ、自分の言葉を封印して。
自分はなんなのだという、刃を自分につきつけながら、バルコニーを登るクリスチャンの姿に涙があふれた。

シラノを演じた、阿部丈二さんはもう貫禄すらあるよ。役の幅の広さは、コンスタントにキャラメルボックスの舞台に立ってる男優の中では、上位に位置するんじゃないかな。ロクサーヌを演じた、客演の阿部哲子さんは台詞が綺麗。聞き取りやすい。アナウンサーの滑舌良さって凄いと思う。あと姿勢の良さは気持ちがよい。
クリスチャンを演じた、多田直人さんは、色男故の軽さから、どんどんロクサーヌへの愛情と自分への不甲斐なさから悩める重さを感じさせてくれる。
ル・ブレの岡内美喜子さんは、こういう脇役ははまるなと。新たな一面かな。

そう、複数役を演じ分けるのは、ちょっと難しいのかな。特に古典だと。詠いあげる台詞もだいぶ少なくなっていたから余計にかな。キャラメルボックスの古典も、劇団に対しても、作品に対しても新しい発見があって面白い。

お名前:
*画像の文字を半角で↓に入力してから投稿してください。