さやなかなるときをここで...

想い出は 流れるままに 揺れ動く 二人の心 河原の出逢い

遠くからラッパの音が聴こえても、雑音にしかならない河原。

はしゃぐ犬、今は自由はないけれど鎖のとれる夢はみるのか。

ここで時間が死んだように感じるのが好きだった。君にあうまで。

みえているつもりで何も感じずに、紙には妄想が映るだけ。

暗闇が自分を隠すのを知って、怖さが麻痺して消えていくの。

時々、遠くから視線を感じていないといえば嘘になるから。

君はいつもスケッチブックと一緒にいた、なにを描いているのか。

ただそこにいるだけなのに、見透かされているような居心地の悪さ。

空を描く黒い筆に目を奪われる。こんなに澄んだ青なのに。

綺麗なものをそのままに受け止めず、澱んだ思考は色に混ざる。

青色をつかおうとする理由なら想像つくから、あの子でしょう?

記憶から綺麗な時を導いて、必死に筆に集中をして。

暗闇で泣いている子に光をあて、涙を拭くのは優しさか。

横顔を描いたのにはわけがある。正面からみる勇気はない。

抱きしめぬ優しさなんて言い訳で、傷つくことを避けているだけ。

触れたなら罪を重ねてしまいそう、欲望としか感じぬ右手。

泣いてたらあの子みたいにそばに居てくれるのならば、雨に濡れたい。

見過ごせばなにも起こらぬはずだけど、良心と化す欲望の渦。

差し出された手を握り返す力に照れ笑いで涙を隠す。

はじめて近くで見たあなたの顔に、かき乱される記憶と鼓動。

雨か涙か濡れた頬を乾かすほどの時間と熱さが欲しい。

紙も筆も出せず、肩越しに濁流を見つめるだけで描ける絵。

求めていた共鳴、ぬくもりが孤独を癒し幸せなひととき。

右手が求めたものは、形があったはずなのに思い出せなくて。

雨はやみ、我に帰る前に背を向けた方が明日を迎えられる。

青色であなたの唇を描く、サヨナラのラの形で笑う。

あの時の嫉妬と喜びをこの道を歩くたびに思い出すの。

濁流が澄みきるようにうごめく渦が穏やかにおさまっていく。

いつかまた会えるのかな、街ですれ違ってもわからないだろうけど。

河原は変化に敏感で、風の声は目覚めを促す囁き。

補足

31音の相聞形式の30首(タイトルをいれると31首)。15年近く前に書いた『想い出はながれるまま〜河原』の別風景。
短歌
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